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がんの転移が心配な方へ:原因・治療・予防の基礎知識

目次

こちらの記事の監修医師
HICクリニック院長/医学博士

「転移」とは?がんが広がる仕組みと意味を正しく知ろう

がんという病気において「転移(てんい)」という言葉を耳にすることは少なくありません。転移が見つかったとき、多くの患者さんやご家族は「もう治らないのでは」と大きな不安を抱きます。しかし、転移について正しく理解することで、必要以上に恐れることなく、治療や生活に向き合うことができます。本記事では「転移とは何か」「どうやって起こるのか」「治療や予防の可能性」について、患者さん向けに分かりやすく解説していきます。

転移とは何か?原発がんと転移がんの違い

がんは、最初に発生した場所(肺、乳腺、大腸など)に腫瘍をつくります。この最初のがんを「原発がん」と呼びます。一方で、そのがん細胞が血液やリンパの流れに乗って体の別の場所に辿り着き、新しい腫瘍を作ることを「転移」といいます。例えば、乳がんの細胞が骨に広がった場合、それは「乳がんの骨転移」であり、「骨のがん」ではありません。がんは「生まれた場所の性質」を持ち続けるのが特徴です。これは治療法を決めるうえでとても重要なポイントです。

転移が起こる部位とその例(リンパ節・骨・肝臓・脳など)

がんは体中どこにでも転移する可能性がありますが、特によく見られる部位があります。

・リンパ節:最も一般的な転移先。リンパ管を通じてがん細胞が運ばれやすい。

・骨:乳がんや前立腺がんでよく見られる。骨折や痛みの原因になる。

・肝臓:大腸がんや胃がんで多い。肝臓は血液の流れが集中するため、がん細胞が集まりやすい。

・脳:肺がんや乳がんで多い。頭痛や痙攣などの症状が出ることもある。

転移する部位によって症状や治療法は異なります。そのため「どこに転移したのか」を知ることが治療選択の第一歩になります。

転移が見つかったときの心構えと正しい情報の重要性

転移が見つかると、多くの方が強い不安を感じます。しかし、医学は日々進歩しており、転移しても治療が可能なケースは増えています。大切なのは、不安に流されず「正しい情報」を得ることです。医師や専門家に相談し、自分に合った治療法を一緒に考えていく姿勢が重要です。

がんはどうやって転移していくのか?そのメカニズム

血液やリンパを通じたがん細胞の移動ルート

がん細胞は、原発巣から血管やリンパ管に入り込み、全身をめぐります。その後、特定の臓器に定着し、再び増殖を始めて転移巣を作ります。

微小転移と遅れて発見される理由

画像検査で見つからないほど小さながん細胞の集まりを「微小転移」と呼びます。治療後しばらく経ってから転移が見つかるのは、この微小転移が少しずつ育ち、検査で見えるサイズになったためです。

転移を助ける遺伝子変異や環境因子とは?

がん細胞は遺伝子変異によって「生き残る力」「広がる力」を強めていきます。さらに、免疫力の低下や生活習慣、体内の環境によって転移のリスクが左右されることもあります。

転移したがんは治らない?誤解と事実を解説

「もう治らない」という思い込みが危険な理由

転移があると聞くと「もう希望が持てない」と思われる方もいるかもしれません。長い治療を続けてこられた患者さんやご家族にとって、この言葉は大きな不安を呼び起こします。たしかに完治が難しい場合もありますが、治療によって「長く付き合いながら生活を続けていく」ことが可能なケースも多くあります。がんの種類や転移の部位、患者さんごとの体の状態に応じて、効果的な治療法は異なります。だからこそ、医師と十分に相談しながら、自分に合った選択肢を見つけていくことが大切です。

がんの種類や転移の場所によって異なる治療成績

例えば、大腸がんの肝転移では、外科手術で転移巣を切除できれば長期生存が期待できます。乳がんの骨転移では、薬物療法で進行を抑えつつ長く生活する人も多くいます。がんの種類や転移部位によって治療法と見通しは大きく異なるのです。

治療法の進歩と個別化医療による希望の選択肢

近年は分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬など、患者さんの遺伝子や腫瘍の特徴に合わせた「個別化医療」が広がっています。従来は選択肢が限られていた転移がんでも、新しい治療で希望を持てるケースが増えています。

転移を防ぐ・進行を遅らせるためにできること

早期発見と定期的な検査の重要性

転移がんの治療では「早期発見」が鍵です。定期的な画像検査や血液検査を行い、転移を早めに見つけることで治療の幅が広がります。

再発・転移リスクを把握する遺伝子検査の活用

近年は、がんの特徴を調べる遺伝子検査によって「再発や転移のリスク」を事前に推測できるようになってきました。当院のがん遺伝子検査では、現時点で268種類のがん関連遺伝子から異常の有無を調べることができ、超早期のがんリスクを発見することが可能です。リスクを知ることで、治療方針や生活習慣の改善に役立てることができます。

HICクリニックのがん抑制遺伝子治療や予防的アプローチとは?

私たちの体では、がん遺伝子(増殖を促す)とがん抑制遺伝子(増殖を抑える)のバランスで細胞の正常な働きが保たれています。しかし、紫外線・喫煙・ウイルス・加齢などの影響で遺伝子に異常が起こることがあります。その結果、がん抑制遺伝子の働きが失われ、がん遺伝子が過剰に活性化して細胞が無秩序に増殖します。こうして異常な細胞ががん細胞となり、増殖を続けることで「がん」という病気が発症します。

そこで当院では、がんの進行を抑えるために「がん抑制遺伝子」を補う治療を提供しています。これにより正常な細胞の働きをサポートし、転移や再発のリスクを下げることを目指します。さらに従来の薬物療法や放射線治療と組み合わせることで、より安定した治療経過が期待できます。また、このがん抑制遺伝子治療を中心に、進行状況などにあわせてDNAワクチン治療、サイトカイン遺伝子治療、NK細胞治療といった免疫療法を組み合わせて予防と治療の両面からアプローチしています。

がんに関してご不安をお持ちの方は、一度当院にご相談ください。

まとめ

がんの「転移」は確かに大きな課題ですが、「転移=終わり」ではありません。

・転移は原発がんから別の場所に広がった状態

・血液やリンパを通じて起こり、特にリンパ節・骨・肝臓・脳に多い

・早期発見や適切な治療で、進行を遅らせたり長く生活できる可能性がある

・遺伝子検査や新しい治療法で、未来にはさらに選択肢が広がる

転移を恐れるだけでなく、正しい知識を持ち、医師と一緒に前向きな治療方針を考えていくことが大切です。

こちらの記事の監修医師

Picture of 平畑 徹幸

平畑 徹幸

HICクリニック院長 医学博士
平畑院長の紹介はこちら

■所属団体
日本内科学会、日本抗加齢医学会、一般社団法人 日本アンチエイジング外科学会、膵臓病学会、日本遺伝子診療学会、日本人類遺伝子学会、アメリカ人類遺伝学会、A4M「米国抗加齢学会」
■著書
『がん遺伝子診断・治療のススメ がん予防・治療の新しい選択肢』、『すい臓病の原因と予防―お腹・背中・腰がモヤモヤしたら…』他

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