脇がかゆい…それって癌の症状?気になるかゆみとの違いとは
脇のかゆみは日常的によくある症状の一つです。汗をかいた後や、服の刺激などが原因で起こることが多いですが、まれに「がん」が関係しているケースもあります。「いつまでもかゆみが続く」「片側だけが妙にかゆい」「しこりのようなものがある」といった症状がある場合は注意が必要です。本記事では、脇のかゆみのよくある原因と、がんに関連する可能性があるケース、その見分け方について分かりやすく解説します。
皮膚トラブルによる脇のかゆみの主な原因(汗・アレルギーなど)
まず、脇のかゆみの多くは皮膚のトラブルが原因です。よくある原因には以下のようなものがあります。
・汗やムレ:特に夏場や運動後に多いのが、「汗疹(あせも)」や「汗によるかぶれ」です。汗が皮膚に長く残ると、かゆみや赤みが生じることがあります。
・摩擦や下着の刺激:締め付けの強い下着や衣類の縫い目がこすれたり、制汗剤・デオラントスプレーが合わなかったりすることで、皮膚が刺激を受けてかゆみが出ることもあります。
・アレルギーや接触性皮膚炎:ボディソープや洗剤、衣類の素材などに反応して皮膚炎が起こることもあります。この場合は、使用をやめると症状が改善することが多いです。
・乾燥:冬場などの乾燥が原因でかゆくなる人も少なくありません。
こうした原因によるかゆみは、赤み、湿疹、カサつきなどの見た目の変化が一緒に出ることが多いのが特徴です。
癌に伴うかゆみとの違い:注意すべきサインとは?
がんが原因でかゆみが起きる場合は、一般的な皮膚のかゆみとは少し異なる特徴があります。以下のような症状がある場合は注意が必要です。
・かゆみだけでなく、脇や周辺に「しこり」や「腫れ」がある
・片側だけが異常にかゆい
・皮膚が硬く厚くなってきた
・かゆみが数週間以上続き、薬でも改善しない
がんに関連するかゆみは、単なる「肌荒れ」では説明がつかないことが多いです。特に「脇のリンパ節の腫れ」や「乳房の異常」が一緒に見られる場合は、がんとの関係がある可能性が考えられますので、早めの受診をおすすめします。
かゆみが長引くときに受診すべき診療科は?
かゆみが数日でおさまらず、繰り返したり悪化している場合は、皮膚科での受診をおすすめします。皮膚の病気やアレルギー反応が疑われる場合、早期に診断できます。一方で、皮膚に異常が見られなくてもリンパ節の腫れやしこりがある、体重減少や倦怠感など全身症状がある場合は、内科やがん専門外来の受診が必要になることがあります。皮膚の症状に隠れて大きな病気が進行しているケースもあるため、判断に迷ったらまずは皮膚科で相談してみることをおすすめします。
脇のかゆみと関係がある可能性のある癌とは?
リンパ節の腫れによるかゆみ:悪性リンパ腫の可能性
脇の下には多くのリンパ節があり、感染症の時や体に異常があると腫れることがあります。中でも注意したいのが「悪性リンパ腫」という血液のがんです。悪性リンパ腫は、リンパ系のがんで、腫れたリンパ節が皮膚を圧迫したり、がん細胞が放出する物質が神経を刺激することで、かゆみが生じることがあります。初期の段階では、痛みを伴わない「しこり」として現れることが多く、皮膚の異常も目立たないため見逃されやすいのが特徴です。「皮膚に異常がないのにかゆい」と感じる場合は、要注意です。もし、脇に硬いしこりやかゆみがある場合は、一度検査を受けておくと安心です。
皮膚がん(パジェット病)で見られる初期症状
「乳房パジェット病」という皮膚がんの一種は、乳頭やその周囲に湿疹のようなかゆみやただれを引き起こします。脇のすぐ近くにあるため、かゆみの範囲が脇にまで広がることがあります。初期のうちは湿疹やかぶれと区別がつきにくく、外用薬で一時的に改善しても再発を繰り返すことがあります。何度も繰り返す皮膚トラブルがある方は、皮膚科や乳腺外科での精密検査の受診をおすすめします。
体の他の部位にがんがある場合の「がん性かゆみ」とは?
体のどこかにがんがあると、皮膚に直接病変がなくても強いかゆみを感じることがあります。これを「がん性かゆみ(がん性掻痒)」と呼び、がんが進行する過程で分泌される物質や、免疫の反応によって起きると考えられています。肝臓がんや胆道がん、血液のがんなどでよく見られ、このかゆみは通常のかゆみ止めが効きにくいのが特徴です。全身に広がったり、特定の部位(脇や背中など)に集中することもあります。全身にかゆみが広がる、あるいは慢性的で不明なかゆみがある時は、血液検査などによる精密な評価を受けることが大切です。
乳がんと脇の症状:かゆみも注意すべきサイン?
脇のしこり・違和感と乳がんの関係性
乳がんは乳房にとどまらず、進行すると脇の下のリンパ節にがんが広がることがあります。特に乳房の外側にできたがんは脇に近く、しこりや違和感、かゆみとして現れることがあります。以下のようなサインが見られる場合は注意が必要です。
・脇のしこりが硬く、触っても動かない
・脇の皮膚がひきつれるように感じる
・かゆみに加えて、乳房や乳首に変化がある
単なる「かゆみ」と思って見過ごされやすいですが、他の変化と一緒に現れる場合は、早めの受診をおすすめします。
炎症性乳がんで見られる皮膚の変化と異常なかゆみ
炎症性乳がんは、皮膚に赤み・腫れ・かゆみ・熱感を伴う、非常に進行の早い乳がんです。乳房の皮膚が赤くなって厚くなり、オレンジの皮のように毛穴が目立つのが特徴で、片側の乳房だけに異常が起こることが多いです。かゆみやヒリヒリ感など、皮膚トラブルのような症状から始まることもあるため、湿疹と勘違いして様子を見てしまう方も少なくありません。ですが、2週間以上皮膚の異常が続いたり、外用薬で治らない場合は、早めに乳腺外科を受診しましょう。
乳がんリスクを知るための遺伝子検査の活用とは?
近年では、遺伝子検査によって乳がんの発症リスクを事前に知ることが可能になっています。特に「BRCA1」「BRCA2」などの遺伝子に異常があると、乳がんや卵巣がんのリスクが高まることが知られています。
・ご家族に乳がんや卵巣がんの経験者がいる方
・若くして乳がんを発症した方が家系にいる
上記に当てはまる方は、一度専門医に相談してみることをおすすめします。当院では、こうした遺伝子診断を通じて将来のがんリスクを評価し、将来的ながんの予防の取り組みをご案内しております。
まとめ
脇のかゆみは、ほとんどの場合は一時的な皮膚トラブルですが、なかにはがんが関係しているケースもあります。特に以下のような症状がある方は早めに医療機関を受診しましょう。
・数週間以上続く、繰り返す、または悪化するかゆみ
・皮膚の赤み、ただれ、硬さや変色がある
・しこりや腫れ、左右差がある
・乳房の変化や、体重減少など他の症状もある
乳がん・悪性リンパ腫・パジェット病(皮膚がん)などが隠れていることもありますが、早期に見つけて対処すれば、治療効果が高くなる可能性があります。当院では、がんリスクを調べる遺伝子診断、予防的な治療のご提案を行っています。お困りの方は、一度当院にご相談ください。早期発見・治療が、ご自身の健康を守る第一歩になります。