トリプルネガティブ乳がんってなに?

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こちらの記事の監修医師
HICクリニック院長/医学博士

トリプルネガティブ乳がんとは?特徴と他の乳がんとの違い

乳がんの中でもトリプルネガティブ乳がんは、特殊かつ治療が難しいタイプの一つとして知られています。
本記事では、トリプルネガティブ乳がんの特徴、進行や転移の傾向、最新の治療法、そして予防・早期発見の重要性について解説します。

トリプルネガティブ乳がんの定義と3つの陰性とは?

トリプルネガティブ乳がんとは、「エストロゲン受容体」「プロゲステロン受容体」「HER2受容体」の3つの重要な分子がすべて陰性(=反応がない)である乳がんを意味します。
一般的な乳がんでは、これらの受容体が陽性であれば、それに応じたホルモン療法や分子標的治療が可能ですが、トリプルネガティブではそれが難しく、治療の選択肢が限られているのが特徴です。

他の乳がんタイプとの違い(ホルモン感受性・HER2陽性との比較)

一般的な乳がんの中には、ホルモンの影響を受けるタイプ(ホルモン感受性乳がん)やHER2というタンパクが多くあるタイプ(HER2陽性乳がん)があります。これらはそれぞれ、ホルモン療法やHER2に効く薬で治療することができますが、トリプルネガティブ乳がんはそれができません。そのため、治療が難しくなることがあります。

若年層・遺伝性との関連性が強い理由とは?

トリプルネガティブ乳がんは、比較的若い世代、特に40代以下の女性に多く見られます。
また、BRCA1という遺伝子に変異がある人に高確率で発症することが分かっています。特に家族に乳がんや卵巣がんを発症した人がいる場合、注意が必要です。

トリプルネガティブ乳がんの進行・転移と予後

急速な進行と再発リスクの高さについて

トリプルネガティブ乳がんは、他の乳がんタイプに比べて進行が早いという特徴があります。発見された時にはすでに腫瘍が大きくなっているケースも多く、治療後の再発リスクも高いとされています。そのため、早期発見と早めの治療が非常に重要です。

転移しやすい部位(肺・脳・骨)とその特徴

このタイプの乳がんは、肺や脳、骨といった部位に転移しやすい傾向があります。特に脳転移の場合、進行が早く、突然頭痛や吐き気などの症状が現れることもあるため、症状が出る前からの定期的な検査が必要です。
また、骨転移によって痛みや骨折が生じることもあり、生活の質に大きな影響を与えることがあります。

トリプルネガティブ乳がんの最新治療法と当院の遺伝子医療

標準治療:手術・化学療法・放射線療法の流れ

基本的な治療の流れとしては、手術による腫瘍の摘出、続いて化学療法(術前、術後)、そして放射線療法が行われます。手術はがんの進行度によって乳房温存術か全摘出術が選ばれます。化学療法では、アンスラサイクリン系やタキサン系といった薬剤が使用されることが多く、手術前に投与して腫瘍を小さくしてから切除する場合もあります。

免疫チェックポイント阻害薬など新たな選択肢

近年では、免疫の力を使ってがんを攻撃する「免疫チェックポイント阻害薬」という新しい薬もトリプルネガティブ乳がんの治療選択肢として注目されています。これは、がんが体の免疫から逃れる仕組みを防ぎ、免疫の働きを強化してがんと戦う方法です。

当院の個別化医療:遺伝子解析に基づく予防・再発対策

当院では、患者さま一人ひとりのがんの性質を遺伝子レベルで解析し、その結果に基づいた個別化医療を提供しています。当院オリジナルのがん遺伝子診断は、乳がんに関連する遺伝子BRCAを含むがん関連遺伝子を現時点で268種類調べることが可能です。
BRCA1に異常があった場合は、乳がん発症率が高いです。
そのため、前がん状態の早い段階からご自身の体のリスクを把握し、がんの発症を未然に防ぐ予防治療の実践をおすすめしています。

トリプルネガティブ乳がんを予防・早期発見するには?

BRCA遺伝子変異の検査と発症リスクの把握

BRCA1やBRCA2といった遺伝子に変異があると、乳がんや卵巣がんの発症リスクが大きく上昇します。特にトリプルネガティブ乳がんとの関連が深いBRCA1変異は、若年での発症につながることもあるため、早めの検査が勧められます。
検査は血液や唾液などから可能で、検査結果に基づいた予防的措置を行うことが可能です。

家族歴がある人におすすめの遺伝子カウンセリング

ご家族に乳がん、卵巣がんを経験された方がいる場合は、まずは通常がんセンターや大学病院で行っている遺伝子カウンセリングを受診していただき、遺伝性の乳がん、卵巣がんについての正しい理解を深めていただいたうえで、最終的に当院の遺伝子診断を受けていただくことをおすすめします。

日常生活でできる乳がん予防と定期的な検診の大切さ

乳がんの予防には、適度な運動、バランスの取れた食事、過度なアルコール摂取の抑制、禁煙などの生活習慣の改善が有効です。
定期的な乳がん検診(マンモグラフィやエコー検査)は、症状が出る前の早期発見につながります。特にリスクの高い方は、若いうちからの検診開始を検討しましょう。

まとめ

トリプルネガティブ乳がんは、進行が早く治療も難しい乳がんの一つです。遺伝的要因や若年発症が多いため、予防や再発防止の観点でも遺伝子医療の役割が大きくなっています。

当院では、最先端の遺伝子解析技術を活用した個別化医療により、一人ひとりに最適な治療と予防をご提案しています。ご自身やご家族の健康を守るためにも、早めの検査が大切です。お困りの方は、一度当院にご相談ください。

こちらの記事の監修医師

Picture of 平畑 徹幸

平畑 徹幸

HICクリニック院長 医学博士
平畑院長の紹介はこちら

■所属団体
日本内科学会、日本抗加齢医学会、一般社団法人 日本アンチエイジング外科学会、膵臓病学会、日本遺伝子診療学会、日本人類遺伝子学会、アメリカ人類遺伝学会、A4M「米国抗加齢学会」
■著書
『がん遺伝子診断・治療のススメ がん予防・治療の新しい選択肢』、『すい臓病の原因と予防―お腹・背中・腰がモヤモヤしたら…』他

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