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すい臓がんって慢性膵炎が原因になるの?

目次

こちらの記事の監修医師
HICクリニック院長/医学博士

慢性膵炎とは

慢性膵炎とは膵臓に持続性の炎症が起こり、破壊された細胞が線維化し硬くなってしまうことで、膵臓本来の機能が失われてしまう慢性疾患です。

自覚症状

慢性膵炎では、比較的重く鈍い痛みが背中の左側やみぞおちに現れます。「夕方になると、背部に痛みが現れる」という患者さんも多くいます。

こうした症状は、一日〜二日といった短期間にのみ起こるのではなく、数か月から数年の間、慢性的に続きます。

慢性膵炎とはすい臓がどんな状態なのか

膵臓は食べ物を消化吸収するために大切な役割を果たす臓器ですが、慢性的に膵臓に対して炎症が生じると、消化吸収の機能が障害されることになります。

一般的な健康診断で慢性膵炎は発見できる?

一般的な健康診断では検査内容に限度がありますが、例えば採血でアミラーゼなどは、主に膵臓に存在する酵素です。

高値では、急性膵炎や膵がんなどの可能性があります(唾液腺疾患や腎機能異常でも高値を示します)。低値では、慢性膵炎などが疑われます。

自分が慢性膵炎とわかるタイミング

慢性膵炎はお腹が痛くなる病気です。自覚症状は腹痛が最も多くみられ、まれに痛みのない患者さんもいますが、約80%の方が経過中に痛みを感じます。

痛みの程度は、強いものからごく弱いものまでさまざまで、慢性膵炎の急性期には急性膵炎と同じようにみぞおちを中心に非常に強い痛みが起こります。痛みは臍へその左右や背中にも及びます。これは、膵臓が胃の裏側にあるためです。そして、吐き気や嘔吐も伴います。場合によっては重苦しさや、鈍い痛みとして感じる場合もあります。

慢性膵炎の治療法

慢性膵炎による痛みの治療としては、痛み止めや蛋白分解酵素阻害薬の内服を行います。膵管の狭窄(細くなったところ)や膵石が痛みの原因と考えられる場合には、内視鏡を用いた治療を行います。

膵管の狭窄部を広げるために、ステント(プラスチック製の筒)を留置したり、内視鏡を用いて膵石を除去したりします。

膵石が大きい場合には、内視鏡の治療だけでは治療が困難なので、ESWL(体外衝撃波結石破砕術)を併用します。

膵液の不足による、消化・吸収不良(脂肪便など)の症状に対しては、膵酵素薬の内服(膵酵素補充療法)を行います。

慢性膵炎は完治するのか

慢性膵炎は進行性の病気であり、完治はしません。

慢性膵炎と糖尿病との関係

糖尿病との関係性

膵臓は、さまざまな消化酵素を含む膵液を作り、十二指腸へ分泌して食べ物を消化する働きと、インスリンなどのホルモンを血液中に分泌して血糖をコントロールする働きを担っている臓器です。

膵臓の内部で徐々に炎症が起こり、正常の細胞が破壊されて線維組織に置き換わり、進行すると消化吸収不良や糖尿病を引き起こします。

糖尿病の人が慢性膵炎になる確率

膵臓に何らかの疾患がある人に起こる糖尿病で、成因は急性・慢性膵炎、膵癌、粘液産生腫瘍、先天性膵形成不全などがあります。

2002年の調査では慢性膵炎患者957例の38.1%が糖尿病を合併し、原因としてアルコール性67.8%、特発性25.6%、胆石性4.9%で、飲酒はアルコール膵炎における糖尿病発症の危険因子であることが分かりました。

また、何らかの膵臓の疾患に伴い、インスリン分泌能が低下し、糖尿病を発症する症例を膵性糖尿病と呼びます。

2005年の疫学調査では、膵性糖尿病は、人口10万人あたり15.2人で、成因は慢性膵炎40.0%、膵癌24.6%、膵切除後10.2%、急性膵炎7.5%、自己免疫性膵炎6.1%の順でした。

膵臓がんになる人は慢性膵炎の患者

慢性膵炎が膵癌のリスクファクターであることは、疫学研究により確立されています。

メタ解析によると、慢性膵炎の膵癌リスクは一般人口に比べて 13.3 倍、慢性膵炎の診断 2 年以内の膵癌症例を除いた場合でも5.8 倍とされます。

特に遺伝性膵炎では 69 倍と非常に高いことが認められています。

慢性膵炎から膵臓がんを発症する原因

文献によって数値は8倍〜26倍と異なるものの、慢性膵炎の患者さんは健常人に比べて明らかに膵がんを発症するリスクが高くなっています。

これは、慢性的な炎症が長期的に持続することによるものと考えられます。

慢性膵炎から膵臓がんになる確率

さらに遺伝性膵炎では、健常人の50倍の確率で膵がんになりやすいともいわれています。

すい臓がんにならないために

一般的な治療法・対策

日本人を対象とした研究結果では、がん全般の予防には禁煙、節度のある飲酒、バランスの良い食事、身体活動、適正な体形の維持、感染予防が有効であることが分かっています。

特に男性では、膵臓がんを予防するためには、禁煙することが効果的であるといわれています。

HICクリニックでオススメしている内容

当院のがん遺伝子検査によって、がんの原因となる遺伝子の異常の有無を調べることができます。

そのためがんが発症する前の段階からがん遺伝子検査を行い、もし異常が出た場合にはその遺伝子が関連するがんも知ることができます。遺伝子異常が出た場合や、既にがんを患っている方には遺伝子治療を提案し、点滴によって異常のある遺伝子を正常に戻していきます。当院の治療は他の標準治療と併用ができ、遺伝子を正常に戻すことで抗がん剤や放射線の効き目を向上させる効果が期待できます。

まとめ

当院はがん遺伝子治療をおこなうクリニックですが予防に特に力をいれており慢性膵炎の患者様には禁酒、禁煙等の生活習慣の改善についてご説明しています。膵臓は自覚症状が出にくいこともあり定期的な健診をお勧めし、専門機関を紹介しています。

こちらの記事の監修医師

Picture of 平畑 徹幸

平畑 徹幸

HICクリニック院長 医学博士
平畑院長の紹介はこちら

■所属団体
日本内科学会、日本抗加齢医学会、一般社団法人 日本アンチエイジング外科学会、膵臓病学会、日本遺伝子診療学会、日本人類遺伝子学会、アメリカ人類遺伝学会、A4M「米国抗加齢学会」
■著書
『がん遺伝子診断・治療のススメ がん予防・治療の新しい選択肢』、『すい臓病の原因と予防―お腹・背中・腰がモヤモヤしたら…』他

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