乳がん治療後の再発
乳がんの治療後の再発というのは、一番最初の乳がんを手術や放射線治療、薬物治療で目に見えるがんが無くなった状態になっても、体のどこかに隠れていたがん細胞がリンパや血流に乗って再び現れることです。
乳がんが再発する時期
手術後2、3年以内に多くは起こることがあります。再発の可能性は手術のタイプやがんのステージ、病理組織学的な特徴、治療の効果などに影響されます。
特に、初回の乳がんのステージが高い(がんが進行している)場合や、リンパ節に転移していた場合、再発のリスクが高まる傾向があります。
また、エストロゲン受容体陽性の乳がんである場合は、再発のリスクが続く期間が長くなることがあります。しかしルミナールA型やB型のようにホルモン受容体陽性の乳がんの場合、再発のタイミングは一般的に初回の治療後の10年から20年後に起こることが多いとされています。
乳がんが再発したときの治療法は?
局所再発乳がんで遠隔転移がなければ、初回治療と同様に手術や術後に放射線治療や薬物治療をします。
その他の治療オプションには、標的療法や免疫療法があります。治療の目的は再発の進行を抑えることと、生存期間の延長です。
乳がんから転移する部位
がんが発生した乳房と同じ側の腋窩(わき)の下のリンパ節ですが、遠隔転移では約30%が骨転移です。
それ以外に胸膜、胸壁、肺、肝臓、脳にも転移します。
転移した場合の治療の進め方
遠隔転移した場合、がんの進行を抑えて症状を和らげることとQOL(生活の質の向上)を維持することを期待して薬物治療を行います。
今まで使用していた抗がん剤の効果が弱まったら、別の薬剤へと薬を取り替えながらの治療を進めていきます。
乳がんの恐ろしさ
2019年の統計データで女性の部位別がん罹患数第1位は乳がんで97,142例になり、9人に1人がかかる病気とされています。20代後半から徐々に増え始め30代後半、40代前半と急速に増え45歳から49歳が最も多く、60代前半で再度ピークを迎えます。再発する恐怖と不安が一番怖いのかもしれません。
乳がんが他のがんと違うところ
乳がん以外のがんは手術で切除すれば、それ以降基本的に追加治療しませんが、乳がんはがんの部位を切除してもまだ目に見えないがんが他の細胞に潜んでいる可能性があり、術後化学療法をやることがあります。また生存率が高いのも特徴です。
5年生存率93.9%、10年生存率83.9%です。10年生存率が高いのに10年経過しても再発する可能性があるのが他のがんとの違いです。
また乳がん治療後に定期的に再発検査する必要があります。身体検査、血液検査、(腫瘍マーカーを含む)画像診断、マンモグラフィー、超音波、MRI、ホルモンモニタリング等を行って、経過をしっかり観察する必要があります。
乳がんの再発リスクを下げるために
①肥満予防と適正体重:
体重を適正に維持することです。乳がんと診断された後に体重が増加した患者さんで、乳がん再発リスク、死亡リスクを調べた報告はわずかしかありません。
ただ、その中の信頼性の高い報告では、体重がおおむね5kg以上増加すると乳がん死亡リスクが1.6倍程度増加することが示されています。
適正体重かどうかは、ご自身のBMI(肥満度や痩せの判定に用いられている指標)を計算し確認してみてください。
②運動:
乳がんと診断された後に適度な運動を行う女性は、行わない女性に比べて乳がんの再発や死亡のリスクが低くなることは、ほぼ確実です。
また、診断後の適度な運動は、QOL(生活の質)にも好影響を及ぼすことが明らかです。乳がんと診断された後は、無理のない範囲で運動を心がけるのがよいでしょう。
一般的な治療法
一般的な治療法は、外科的治療、放射線治療、薬物治療になります。
治療法は再発部位の大きさや、患者さんの状態によって異なる場合があります。主治医と相談しながら、最適な治療法を選択することが大切です。
HICクリニックでオススメしている内容
乳がんで標準治療をされている患者さんには標準治療を継続してもらい、テーラーメードによる患者さんの遺伝子治療を併用することもあります。
また患者さんやご家族と相談の上、標準治療を開始する前に遺伝子治療をする場合もあります。乳がん治療後の患者さんには当院オリジナルのがん遺伝子診断(現在251種類の遺伝子)を実施し、診断結果を参考にテーラーメードの遺伝子治療を提案しています。乳がんに関連する遺伝子にBRCA1という遺伝子がありますが、この遺伝子についても当院で異常の有無を調べることは可能です。
BRCA1に異常がある場合は、乳がん発症率が平均65%という報告があります。そのため前がん状態の早い段階からご自身の体の状態を知ることで、がんになる前からがん予防治療をおすすめしております。
まとめ
乳がんは生存率の高い病気ですが、10年後〜20年後に再発することもあります。だからといって変に不安がらず、また侮らずにがんと共存する姿勢を持つことも大切だと思われます。