腫瘍マーカーで乳がんって分かるの?

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こちらの記事の監修医師
HICクリニック院長/医学博士

腫瘍マーカーで乳がんは分かるのか

現在診断に使用できる特定の腫瘍マーカーはありませんが、治療の効果や再発、転移した場合参考にする腫瘍マーカーがあります。

ただし、これらの腫瘍マーカーは治療の経過や再発リスクを評価するための補助的なツールとなります。

より確実な方法は画像診断や細胞診、組織診がより確実な診断方法となります。

乳がんで見るべき項目・数値

乳がんでは、目で見る視診(乳房の窪みやただれの有無、乳房の形の左右差、乳頭からの分泌物の有無)や実際乳房を触る触診(しこり等の有無があるか)があります。

ドッグや検診でマンモグラフィ(乳房専用のX線検査)で微細な石灰化を見つけることができます。超音波検査エコーでは乳房内の病変の有無や周りのリンパ節への転移の有無も調べられます。因みに乳腺は白く乳がんの多くは黒く写ることがあります。放射線による被曝が

ないため妊娠中でも検査可能です。 

乳がんの可能性を知る項目

上記の検査でがんが疑われる場合には病理検査(細胞診、組織診)を行います。細胞診はエコーなどの画像をみながら細い針を刺し注射器で吸い取った細胞を顕微鏡で調べる検査です。乳頭から分泌物がある場合は分泌物に含まれる細胞を調べます。組織診は針生検と手術で組織を取る外科的生検があります。いずれも病理検査なのでがんの有無がはっきりします。

MRI、CT、骨シンチ、PET検査は手術や放射線治療を検討する時に行う検査で病変の広がりや転移の有無を調べます。

また腫瘍マーカーで参考にすべき項目には、CEAやCA15-3、HER2などがあります。

CEAは特異性は高くありませんが、再発や治療効果のモニタリングに使われることがあります。CA15-3も乳がんの進行や再発モニタリングに有効ですが、進行がんでないと必ずしも検出されないことがあります。HER2も乳がんの予後や治療法(特にHER2陽性乳がんの治療)において非常に重要な指標です。HER2の過剰発現のうむを調べることにより、ターゲット治療薬が有効かどうか判断します。

基準値と注意すべき数値

腫瘍マーカーの値の変化だけではがんの有無やがんが進行しているか確定できず、がん

があっても腫瘍マーカーが正常のこともあります。

参考に下記の項目の基準値をご覧ください

・CEA

基準値: 一般に5 ng/mL以下が基準とされます。

注意点: 値が5ng/mLを超えると、がんの存在が疑われますが、特異性が低いため乳がんに特有というわけではありません。大腸がん、肺がん、膵臓がんなどでも上昇します。また、喫煙者や炎症性疾患などでも増加することがあります。

・CA15-3

基準値: 通常は30 U/mL以下が基準です。

注意点: 値が高くなると、進行乳がんや再発の可能性が考えられますが、他のがんや非がん性の病状でも上昇することがあります。特に30 U/mL以上になると乳がんの進行や再発を示唆する場合がありますが、診断は他の検査結果と合わせて行います。

・HER2

基準値: HER2は一般的に免疫染色(IHC)などで評価されます。IHCのスコアは以下のように評価されます。

0 または 1+: HER2陰性

2+: 境界線上(FISHで追加検査が必要)

3+: HER2陽性

注意点: HER2陽性(スコア3+)の場合、がんがより積極的に増殖する傾向があり、抗HER2治療が有効です。陰性の場合はこの治療は適用されません。

乳がんの進行具合

乳がんの進行具合はステージ(STAGE)により分類されます。がんの大きさ広がり

具合、リンパ節への転移の有無、遠隔転移の有無で決まります。ステージ0からⅣまで

あります。

ステージの分類は下記をご参考ください。

・ステージ0:非浸潤がん(乳管内がんなど)。周囲の組織に浸潤していない。

・ステージI:腫瘍が小さく(2cm以下)、リンパ節転移もない。早期がん。

・ステージII:腫瘍が2~5cmに拡大、または少数のリンパ節に転移が見られる。

・ステージIII:腫瘍が5cm以上、または広範囲のリンパ節に転移しているが、遠隔転移はない。

・ステージIV:がんが他の臓器に転移している(遠隔転移)、進行がん。

腫瘍マーカーの信頼性

乳がんにおける腫瘍マーカーの信頼性は、用途によって異なります。腫瘍マーカーはがんの進行や治療効果の評価、再発の監視に役立ちますが、初期診断やがんの有無を確実に判定するには不十分な場合があります。そのため、腫瘍マーカー単独ではなく、画像検査や病理検査などと組み合わせて使うのが一般的です。

乳がんを予防したい場合

乳がんを予防するには、生活習慣の改善や定期的な健診が重要です。乳がんのリスクを完全に排除することはできないですが、以下の対策を取ることでリスクを低減させることができます。

自分でできる予防方法

①定期的な検診:早期発見は乳がん予防の最も効果的な方法の一つです。定期的な検診により、早期の乳がんを発見できれば治療の効果が大幅に高まります。

②健康的な食生活:食生活はがん予防の重要な要素です。特に果物と野菜を食べることや、脂肪の摂取を控えることが大事です。

③適度な運動:定期的な運動は、乳がんのリスクを減らす効果が証明されています。週に150分以上の中程度の運動(ウォーキングやジョギングなど)を目標にすることで、ホルモンバランスを調整し、免疫力を高めることができます。

④禁煙、アルコールの制限:喫煙は乳がんだけでなく、他の多くのがんのリスクも高まります。またアルコールもリスクを高めるため、1日1杯以下に抑えることが推奨されます。

HICクリニックでおすすめしている内容

当クリニックはがん遺伝子専門クリニックなので検査、予防、治療も含めて総合的に行っています。乳がんの遺伝子検査は主にBRCA1とBRCA2遺伝子の変異を調べます。

乳がん全体の5パーセントから10パーセントが遺伝によるものでまた遺伝性乳がんの半数以上がHBOC、遺伝性乳がん卵巣がん症候群と言われています。当院はBRCA以外にも乳がん関連遺伝子やがんを引き起こす遺伝子を現在まで251種類検査が可能です。またここ16年間で約4000人以上のがん治療と予防の実績があります。

まとめ

乳がんの予防には、健康的な生活習慣の維持、定期的な検診、リスク因子の管理が重要です。特に、食事や運動、体重管理などの生活習慣の改善が乳がんリスクを減らす上で効果的です。また、早期発見を目的とした定期検診も乳がん予防の鍵となります。家族歴や遺伝的リスクがある場合は、専門医と相談し、適切な予防策を講じることが大切です。

こちらの記事の監修医師

Picture of 平畑 徹幸

平畑 徹幸

HICクリニック院長 医学博士
平畑院長の紹介はこちら

■所属団体
日本内科学会、日本抗加齢医学会、一般社団法人 日本アンチエイジング外科学会、膵臓病学会、日本遺伝子診療学会、日本人類遺伝子学会、アメリカ人類遺伝学会、A4M「米国抗加齢学会」
■著書
『がん遺伝子診断・治療のススメ がん予防・治療の新しい選択肢』、『すい臓病の原因と予防―お腹・背中・腰がモヤモヤしたら…』他

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